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SUNABIマガジン

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クジラのうんこプロジェクト

大方ホエールウォッチングでは、土佐湾に“定住”しているカツオクジラの鯨類調査を行っています。ホエールウォッチングが始まった当初~2015年までは、(現)国立研究開発法人水産研究・教育機構による、土佐湾内での分布を把握する大規模な捜索や、他地域との往来を調べるための個体識別調査が行われました。2015年以降は、ホエールウォッチング中に出逢ったクジラの個体識別を自分たちでできる範囲内で行っています。

排泄物が、キラキラ輝くお宝に

高知県では、土佐湾に暮らすクジラは「ニタリクジラ」として親しまれ、県内各地でホエールウォッチングが行われてきました。しかし、2017年ごろから、ちらほらと「ニタリクジラではなくカツオクジラではないか?」という噂が浮上しました。現地でホエールウォッチングを行う私たちにとっては一大事。2022年に開催した勉強会では国立科学博物館の山田格氏と田島木綿子氏にお越しいただき、種を特定するために必要な事を教えていただきました。高知県では、10mを超えるひげクジラが定住しているとても恵まれたフィールドにも関わらず、これまで調査があまり進んでいない状況も把握することができ、とにかく種を特定できるだけのサンプル数が少ないとのことでした。
サンプルは、「DNAを調べるため表皮が必要」とのことでしたが、これまで表皮が浮いているところを見たことがありません。見逃しているだけかもしれませんがそれだけ発見は難しいということ。他に目の前のクジラが落としてくれるものを考え、すぐに「排泄物」が思い浮かびました。ホエールウォッチング中にこれまでも何度もそのシーンに出くわしてスルーしてきた落し物。
クジラの排泄物からDNA解析できるか分からないという状況でしたが、その勉強会の2か月後。ホエールウォッチング中にクジラが目の前でしてくれたので、一か八か急いで船にあったバケツですくい、入れ物を準備していなかったので、船長が飲み終えたコーヒーのペットボトルを急遽すすいで封印。国立科学博物館の田島氏へ連絡したところ「いいですね!ぜひ冷凍で送ってください!」と言ってくださり、これまで見過ごしてきた「排泄物」がキラキラと輝いて見える貴重なお宝になりました。

 

クジラのうんこ

プロジェクト始動

目の前を泳ぐクジラから初めて排泄物を取ってからというもの、今後、ニタリクジラかカツオクジラかを調べるために必要な費用や、結果が出た後の活動はどうするかなど、田島氏にもご協力をいただきながら進めていきました。目的や目標が明確になったのち、専門家や企業も一緒に調査を進めていくことも決定し、2023年日本初のプロジェクトを始動しました。
その名も、「クジラのうんこプロジェクト」。
このパワーワードなネーミング考案には、大人たちがまじめな顔して「うんこ」「うんち」どっちにする?会議を行いました。このコラムだからすべてをお伝えしますが、「うんち」は誰でも言いやすく可愛い感じがして×、「うんこ」は少し言うのに恥じらいがあり、クスって笑ってくれそう、印象に残るだろうという結果となり、「クジラのうんこプロジェクト」に決定しました。

 

「見る」から「知る」へのホエールウォッチングへ

ホエールウォッチングといえば、クジラを見て楽しむ体験(観光)という印象があると思います。黒潮町のホエールウォッチングも、これまで「見る」ことを重要視してきました。
1994年に黒潮町で開催した「~漁師が呼びかける~世界ホエールウォッチング会議」で、「将来のホエールウォッチングには、保護と教育と研究という要素を入れるべきだ。」という議事録が残されています。教育と研究はその対象となるクジラや海にはまだまだ分からないことが多くあり、研究を進める必要性と、海のことを学ぶ要素として、保護は自然界、生態系へ知識を用いて還元するというこの3つの要素が非常に重要なコンテンツであることが分かります。
クジラのうんこプロジェクトは、それら3つを観光に結びつける重要なコンテンツとしても誕生しました。調査・研究というと、研究者などの専門家が行うイメージですが、このプロジェクトはお客さんと一緒にクジラを探すだけでなく、クジラの「うんこ」も探し、海からうんこをすくいあげます。すくったクジラのうんこは、重要なサンプルとして国立科学博物館に冷凍で発送し、その後研究者によって解析されます。ホエールウォッチングを行いつつ、うんこの「調査研究」に協力できるホエールウォッチングは日本でここだけ。何度も遭遇することでもありませんが、人生に一生あるかないかの体験を、味覚を除いた四感で感じていただいております。

 

調査の様子

これまでとこれから

プロジェクトで採取されたクジラのうんこからのDNA解析が成功し、2024年正式にニタリクジラ→カツオクジラと発表がされました。高知県内では「カツオクジラ」として徐々に浸透し始めています。
これで終わりではなくこれからもクジラのうんこプロジェクトは、乗客と一緒にうんこの採取を行います。DNA解析だけでなく、捕食した餌生物やクジラの行動、土佐湾の海水も採取し、クジラが生息する土佐湾の海洋環境、プランクトンなども少しずつではあるが派生しながら広く調査を進めていきます。鯨類たちが好んで暮らし、回遊ルートにもなる恵まれた土佐湾で未知のカツオクジラを知り、保全につながるよう「人と自然のつきあい方」これからも模索していきます。