12月のよく晴れた午後、砂浜美術館事務局の机をはさんで、創設時の実行部隊「砂美人連」の加持おんちゃんと、砂浜美術館・ホエールウォッチング担当サコが、対面。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
加持誠司(以下、加):本日の名言「自分の青春時代は砂美人連」。本職は地元の郵便局の局長さん。郵便局も地域貢献をと言われた時代、仕事のためにも都合よしと砂美人連に足をつっこむ。過程が大事、想像できる余白が大事。
サコこと大迫綾美(以下、サ):ショーで見た大きな物体に餌をやり触れた!感動によりイルカにハマる。専門学校時代に鯨類調査の海で見た周囲がイルカで埋め尽くされたスケール感!により野生にハマる。野生のクジラを追って、ここへ。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
来てみたら「すなび」だった。
サ)そうです。クジラを追って、来てみたら美術館。…水族館でもなく。なんで??ホエールウォッチングと何の関係?
加)まぁ、「美術館には館長がいるろう。」「だれにする?」「町長?商工会会長?」ってなったがよ。
けんど形がないに、俗人的な人ではオモシロないと。夢が地に落ちる。
サ)建物がない、夢の美術館…。で??
加)「クジラを館長にしたらえいやいか」と。
サ)いきなりの、クジラ!! その時のみんなの反応は?
加)スッと共有。
サ)え。ふざけすぎたらいかんろう、とかは…なかったんですか?
加)いやぜんぜん。だれっちゃぁ反対せんかった。
サ)・・・。
加)バカバカしさ、意外性、道にはずれたことが印象に残るがよ。で、やりきるのが大事。やりきることに、のるのも大事※
※1990年4月1日の「砂浜美術館」開館式では、館長あいさつ(録音したクジラの鳴き声に楽芸員が通訳)が披露され、本物の町長など町の名士が正装で参列。見事にのってくれた。
というわけで、スッと就任したニタリクジラ館長ですが。当の館長は、喜んでいる?
サ)(大きくうずきながら)もちろんです!!!名誉がある。
加)野生のクジラも、「注目」はうれしいわねゃ。
サ)もちろん!知られなかったら、保護もなにもない。「館長」として注目されるなんて名誉。
しかも、「ニタリクジラ館長」。ザトウでもなく、日本近海でしか会えないニタリクジラ。他のどこの館長にもなれない。
加)お~、そら「すなび」ができて、クジラもここにおってよかったやいか。
サ)そうそう!クジラ館長じゃなくて、「ニタリクジラ館長」ってことが、特に名誉なことです。
加)海で、ニタリとしてるろうね。
サ)館長と言われて、ニタリと。(あ、けど、本当の名前の由来はそうじゃないですよ~)
ところで、そのニタリクジラ館長は、おひとりじゃない??
サ)水産庁の調査もやりつつ30年のウォッチングで、「個体識別」できているのが60頭。
加)みんなに名前があるが?
サ)背びれの形とか体についた傷とかで、「与三郎」もあれば、「TB-16」みたいな番号だけの子も。みんなにつけたいけど、数年単位で会えたり会えなかったりするんで…。
加)数年単位… そらまた、スゴイことやね。
サ)それでも、1年中土佐湾にいてくれるからできることで、ニタリの、ちゃんとしたデータは世界でもかなり珍しいかと。親子とか家族構成が分かる子もいますよ。
加)ほんなら「今日は、館長の浮気現場をおさえにいくぞ!」みたいな物語できるね。もしくは、完全に逆の発想で、「館長に会わないために、どう進むか?」
サ)??????(理解するのに、一時かかる)
あ~。クジラから”逃走中”みたいな?「館長から逃げ切った!みんなの勝ち!」…と、励ますと。
加)「船に乗るだけでもすばらしい」も伝えられたらってこと。見えんかった時も、ゼロやない。
サ)同じ空間にはおったよ、と。こんだけ広い範囲のかくれんぼを、4時間もかけてできる贅沢。
などなど、館長ウォッチングのネタも
加)いろいろ考えられる。とにかく発想力。頭をやわらかくして。
サ)クジラが館長、みたいな、やわらかさで。
加)ここは、なんもないところから、ゼロから創り上げたけん強い。美しい浜は、日本にも世界にもなんぼやちあるけんど。すなびは、ここだけやけん。
サ)ニタリクジラも、「館長」は、ここだけ。
加)まぁ、若いもんで、自分らでできることを考えてみて。歳いくと発想力もどんどん薄れていくわ。
サ)いや、溢れ出てますけど。笑
最後に、砂浜美術館で記念撮影を…
加)こんな顔撮らんちかまん!
いや、衣装も準備しましたので。(オフィシャルTシャツを手渡しつつ)SUNAHAMA BIJUTSU”CAN”なんです。
加)Yes, I can.か。
サ)そうです、Yes, WE can.です。
加)けどこれ、半そでやいか!71ぞ。風邪ひいて死んだらどうするぞ!(と言いつつ、なんかうれしそう…)
【『HIRAHIRA TIMES 2019』(非売品)より】