OCAEN BOTTLEプロジェクト

1991年4月9日午後6時頃、砂浜美術館のスタッフが四万十市(旧中村市)平野海岸で1本のメッセージボトルを拾いました。瓶の口はロウで固められ、水が入らないように工夫されていました。蓋をあけ中の手紙を取り出してみると、そこには9か国語でメッセージが書かれていました。それは、アメリカテキサス州ボーモントに住む、当時11歳のブライアン君が「理科の研究」のために流したものでした。手紙にはこう書いてありました。
私の名前はブライアンアカーズ11歳です。私の学校で何年かかかる理科の研究をはじめました。それでは海の潮の流れを研究しています。この紙にいつ、どこでこのボトルを見つけたか書いて送ってください。ぼくもこちらから返事をだします。どうもありがとう。

砂浜に流れ着いたメッセージボトル
ボーモンドはメキシコ湾岸にあるので、流れてきた経路について様々な憶測をよびました。そこで、1991年4月18日ブライアン君宛てに手紙を出すと、5月2日に16歳になったブライアン君から返事が返ってきました。手紙の入った瓶は、タンカーで働いている近所の人に手伝ってもらい、大西洋側と太平洋側に1,106本3年間(1986~1988)かけて流したということで、その一本が高知県にたどりついたことが分かったのです。私たち砂浜美術館では、修学旅行や研修でこの町を訪れる人たちに、ビーチコーミングという体験プログラムを実施しています。ビーチは砂浜、コームは櫛という意味で、砂浜に流れ着いた漂流物を櫛でかき集めるようにして楽しむことをいいます。このプログラムでは、メッセージボトルについても必ず紹介します。どこから、どれくらいの時間をかけて流れ着いたか基本的には分からない漂流物がほどんどの中で、唯一このメッセージボトルはその物語が分かるものです。太平洋のどこかで流したということ、そして、5年の歳月がかかってたどりついたであろうということ。その後、高校生の英語の教科書にも取り上げれたところで、メッセージボトルの物語は終わっていました。

メッセージボトルのスタートはボーモント
新たな物語のはじまり
時は流れ、2022年10月。ブライアンくんの手紙を拾ってから30年以上の月日が過ぎました。砂浜美術館のスタッフが「今、ブライアンくんはどうしているのだろう」といいました。そして、彼は「ブライアンを訪ねる」「OCEAN BOTTLE PROJECT」を企画しました。これが新たな物語のはじまりです。インターネットが世界中をつなぐ時代、ブライアンくんだと思われる人に行きあたりました。2022年11月、スタッフがこれまでの経緯を書いて、ブライアンくんにお会いしたいことを書き記した手紙を送りました。1か月、2か月、なかなか返事がこないことに不安になっていたところ、1本のE-mailが届きました。それは47歳になったブライアンさん、本人からでした。長い文章の最後には、こう記されていました。
I look forward to future correspondence with you. If I can answer any questions you have or if anything in my message is unclear, please do not hesitate to contact me.
Thank you for your interest, Brian
この後のご連絡を楽しみにしております。ご質問やメッセージで不明な点がございましたら、お気軽に連絡してください。ブライアン
ブライアンさんとの対面
その後メールやオンラインで面会を重ね、ついに2023年10月9日ブライアンさんとアメリカで直接お会いすることができました。不思議な縁、10月9日は、ブライアンさんが36年前にボトルを流した日だったのです。48歳になったブライアンさんは、アメリカの地理学者になっており、このボトルプロジェクトについて、詳しくお聞きすることができました。すると、これまで私たちがしらなかったことも分かってきました。

ブライアンさん(左)とプロジェクトを企画した砂浜美術館職員の松下(右)
メッセージボトルに入った手紙には、ボトルナンバーが記載されており、私たちがひろったものはNo.752。ブライアンさんはこのボトルナンバーから流した緯度経度を教えてくれました。
それが、この場所。そして、流した日は1987年10月9日。拾ったのは1991年4月9月ですので、3年半かけて平野海岸までたどり着いたのです。さらに、メッセージボトルは、30か国・11州から拾った報告の手紙を受けとったそうです。日本からは高知と沖縄。そして、このように交流できるということは、ボトルプロジェクトが今なお続いていることであり、そのことにお互い感動し、再会を約束して別れました。すこしだけ、ブライアンさんからのメッセージ映像を紹介します。ブライアンさんの自己紹介です。

様々な資料をもとに話を聞く
この先も新しい物語がうまれることを期待
黒潮を通じて流れ着いた一本のメッセージボトルは、まだまだ未知の物語を運んできてくれるかもしれません。そして、私たちがその物語を作っていくことができるのです。流れ着く漂流物から広がる世界は無限大です。
