海の恵みに育まれた文化や暮らし:黒潮町のカツオ

カツオ一本釣り絵馬(黒潮町:上川口天満宮蔵)

↑カツオ一本釣り絵馬(黒潮町:上川口天満宮蔵)

黒潮町とカツオ

自然の恵みがいっぱい詰まった豊かな海に臨むまち「高知県黒潮町」。ここ黒潮町は、その海の恵みとともに独自の文化や風習が育まれ、中でもカツオ漁は400年以上の歴史があるといわれています。

今日まで続けられてる土佐の一本釣りという漁法により、日本一の漁獲高を誇る船団を有し、全国でも“カツオの町”として知られていることから、カツオは観光を含めた黒潮町の大事な基幹産業となっています。


黒潮町に残るカツオの歴史

カツオ絵馬(黒潮町:上川口天満宮蔵)

↑カツオ絵馬(黒潮町:上川口天満宮蔵)

高知県では、縄文時代の遺跡からカツオの骨が出土し、太古より土佐の人びとにとって貴重な食料であったことが伺えます。しかし、ここ黒潮町ではカツオ漁がいつ頃から始まったのか定かではなく、天正18年(1590年)の佐賀村地検帳に佐賀明神浜や奥野々村に水主や舟番匠の居住が認められることから、江戸時代以前に、佐賀浦には漁業を営む人びとが暮らしていたことが推察できます。
その後の安永7年(1778年)の「西浦廻見日記」では、佐賀浦のカツオ漁の記録が見られ、天保年間(1830~1844年)の浦々諸縮書では、佐賀浦にはカツオ船があり、カツオ漁が行われていた記録が残っています。

また、黒潮町の上川口天満宮に奉納されている『カツオ一本釣り絵馬』(1865年:慶応元年)は、高知県内に現存する最古のカツオ漁の絵馬で、日本の貴重な民俗文化を伝える一枚として、複製が千葉県の国立歴史民俗博物館に収蔵されています。この絵馬でもわかるように、昔のカツオ漁は艪漕ぎの和船で行われ、港から30分や1時間も漕ぎだせば、カツオも豊富な絶好の漁場が広がっていました。しかし、当時は新鮮な魚を保存する技術がなかったため、獲れたカツオはカツオ節にしたり、焼き魚にして幡多郡一帯に売りにいったとされています。

自然の力を恐れ敬う文化や風習

佐賀の浦に浮かぶ小さな島「鹿島」にある鹿島神社

↑佐賀の浦に浮かぶ小さな島「鹿島」にある鹿島神社

海は豊かな恵みを享受できる一方で、ときに人の命を危険にさらすような災いをもたらすこともあります。そんな自然の力に対し、黒潮町の人びとは恐れ敬うことから、独自の文化や風習を発展させてきました。

鹿島神社大祭 鹿島の前に立ち寄る船

その一つが鹿島神社に対する信仰です。鹿島は佐賀の浦に浮かぶ小さな島で、幡多十景にも数えられる眺望の美しい場所です。島全体神域とされ、山頂には常陸(茨城県)の鹿島神宮から勧請してきたとされるタケミカヅチノカミが祀られる鹿島神社があり、古くからこの地では海上安全の神様として信仰されてきました。毎年3月の第1日曜日(もとは旧暦3月3日)には、ご神幸や鼓踊り、漁船の海上パレードなどが行われます。

また、遠洋までカツオ漁に向かう船は鹿島の前に立ち寄ると、式三番(舟唄)を謡い、航海の無事を祈ってから出港します。一方、佐賀の地に残る船主は、年に2度、『申し』というお祭りで出漁している船の無事を祈願する習わしがあります。

佐賀地区では、男衆が長い漁に出ている間、家の留守を預かる女衆が、夫や子どもたちの無事や大漁を神仏に祈る風習『お大師講』が残されています。毎月1度、講仲間の家に集まり、弘法大師のお姿を拝むというものです。大師のお姿は1ヵ月ごとに、各家々を持ち回りでお大師講が行われます。講が終われば、準備した茶菓子を食べながら、日ごろの暮らしぶりの話や雑談に花が咲きます。

黒潮町のカツオ漁、受け継がれる一本釣り

カツオの一本釣り

↑漁の時間は短いため、みんなで競うように釣ります

黒潮町佐賀の一本釣り漁の船団は大型船9隻、中型船10隻を有し、3月から12月にかけて、南方のフィリピン沖から三陸沖や北海道沖まで北上するカツオを追いかけるように操業します。餌となるカタクチイワシが入手しやすいことや、魚の鮮度や競り値を考慮し、静岡県焼津や宮城県気仙沼など、全国各地の港に水揚げしています。

1枚目の写真の絵馬にある艪漕ぎ和船から、エンジンを搭載した船に変わった今日においても受け継がれている伝統的な一本釣り漁。漁労長が、水温や黒潮の流れ方などさまざまなデータと、自身のこれまでの経験をもとに、大海原のわずかな変化(カツオに追われて水面近くに来たイワシを狙って鳥が水上を舞っている場合など)をいち早く読み取り、現場に急行してカツオを釣り上げる。それが昔から続く一本釣り漁の基本です。

一本釣りではカブラと呼ばれる疑似餌が使われます。カブラには、釣ったカツオを頭上に放おり上げたときにカツオが針から外れるように、針は曲がりが浅く返しもついていません。
また、漁の時間は一瞬で終わります。根こそぎ獲ってしまう巻き網漁などと違い、一本釣り漁はカツオの体を痛めることもなく、釣れなかったカツオは海に残る、持続可能な漁法なのです。

『黒潮町の鰹パンフレットより』

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上川口天満宮(かみかわぐちてんまんぐう)
高知県内で最古のカツオ漁の絵馬が奉納されている天満宮。

鹿島神社(かしまじんじゃ)
海に囲まれた小島にあるため近寄ることはできませんが、美しい眺望が楽しめます。

黒潮一番館(くろしおいちばんかん)
カツオのたたきづくり体験や近くの漁港で水揚げされたおいしいカツオ料理が食べれます。体験のご予約はこちら


カツオの藁焼きたたきを、黒潮町の天日塩で食す

土佐伝統の藁焼き

「藁焼き」は、藁の炎でカツオの表面だけ瞬時に焼き上げることで、鮮度と旨みを逃がすことなくギュッと凝縮させます。うっすらと脂が溶けて身になじみ、カツオの生臭さを消し、旨みをぐんと引き立たせ、さらに、何とも言えない独特の香ばしい豊かな風味は、この「藁焼き」でしか味わえません。

砂浜美術館では、この「カツオの藁焼きたたき」を、黒潮町で作られた天日塩で食べていただくことをおすすめしています。

天日塩とゆず醤油をかけた藁焼きたたき

天日塩は、その道25年になる塩工房『ソルティーブ』の「土佐の塩丸」。火は一切使わず、太陽と風の力のみで、じっくりと手間暇をかけて作られた天日塩は、市販の精製塩とは全く異なり、ツンとした辛みはなく、旨み(甘み)が感じられるお塩です。
それを脂ののった藁焼きカツオたたきにふりかけ、手のひらでたたいて十分に馴染ませ、刻みネギと薄くスライスしたにんにくでまずはシンプルに“塩たたき”でどうぞ。カツオ本来の美味しさを感じていただけます。

塩たたきを楽しんだあとは、さらに玉ねぎやトマトなどお好みのお野菜をたっぷりと加え、付属の高知県産ゆずを使用した“ゆず醤油”をかけてお召し上がりください。塩たたきとは違った、さっぱりとした美味しさが楽しめます。

最後はカツオの湯かけで締める

カツオの湯かけ

もともとは、漁師さんが船上で食べる漁師料理。お腹がいっぱいになってからでも、これならサラサラと食べられます。ご飯の上にカツオのたたきをのせ、お好みの醤油をまわしかけて、熱いお湯を注ぎ、たたきの表面が白くなったらどうぞ。


●天日塩付きのセット

鰹づくし

鰹づくし

本場土佐の「カツオの藁焼きたたき」はもちろん、脂がのったトロ鰹のさしみに鰹の角煮、さらに鰹の漬け丼をセットにした、カツオ料理の豪華フルコース!

価格 5,000円(税込・送料込)
内容量 たたき×1、刺身×1、角煮×1、漬丼×1、ゆず醤油・天日塩付

現在、品切れ中です!

わら焼鰹たたき・ギフト①

わら焼鰹たたき・ギフト①

お世話になっている大切な方への贈り物は、やっぱり大きな節がいい!そんな方におススメのギフトです。

価格 4,600円(税込・送料込)
内容量 700g(大2本)、ゆず醤油・天日塩付

現在、品切れ中です!

わら焼鰹たたき・ギフト②

わら焼鰹たたき・ギフト②

大勢で食べるには最適のたっぷり1kg。でも小分けですので、ご夫婦の食卓など少しずつでも召し上がっていただけます。

価格 4,350円(税込・送料込)
内容量 1kg(小3~5本)、ゆず醤油・天日塩付

ご注文はこちらからどうぞ

●天日塩なしのセット

鰹三昧

鰹三昧

本場土佐の「かつおの藁焼きたたき」はもちろん、脂がのったトロ鰹のさしみに、鰹の角煮をセット。色々な鰹料理が楽しめるお得な詰め合わせです。

価格 4,600円(税込・送料込)
内容量 たたき×1、刺身×1、角煮×1、ゆず醤油付

現在、品切れ中です!

わら焼鰹たたき・ご家庭用

わら焼鰹たたき・ご家庭用

手軽に本場土佐の鰹のわら焼きたたきを食べてもらいたい。そんな思いでお買い求めいただきやすいご家庭用もご用意しました!

価格 3,700円(税込・送料込)
内容量 700g(小3~4本)、ゆず醤油付

ご注文はこちらからどうぞ

●お中元にもどうぞ

のしは無料で対応いたします

のしについて(無料で対応いたします)
のしは右写真の短冊タイプとなります。
【上段】表書きを下記よりお選びいただけます。
(御中元、御祝、御歳暮、寸志、内祝、御年賀、御見舞、粗品)
【下段】贈り主の名前が入ります。お名前をご指定いただけます。

配送について
【配送】クロネコヤマト/クール便
【配送希望時間】下記よりお選びいただけます。
午前中/12~14時/14~16時/16~18時/18~20時/20~21時
【着日指定】クレジット決済のお客様は御注文日から8日以降、お振込みのお客様は御入金日から12日以降でご指定いただけます。

※上記の2点については、ご注文入力フォームの【その他お問い合わせ】の欄に御記入ください

自然と上手くつきあう「しごと」:吉田さんの天日塩と清藤さんの塩壺

吉田さんの天日塩と清藤さんのクジラの塩壺

自然と上手につきあいながら暮らす人びとがいます

大地、太陽、風、海・・・、その自然と上手につきあいながら暮らす人びと。そんな人びとの営みの一つひとつを、私たち砂浜美術館は大切な「作品」と呼び、また、私たちの住む黒潮町というまちの風景をつくっています。

今回は、ここ黒潮町で暮らし、自然と対話をしながら「しごと」をするお二人の作品をご紹介します。
一つ目は、その道25年の天日塩工房『ソルティーブ』の2代目塩守・吉田拓丸さんが作る天日塩を、
もう一つは、暮らしの器を作り続ける工房『日常屋』の清藤弘晃さんが作る塩壺です。


吉田さんの天日塩

吉田さん家族

「生物は海から生まれ、人間を含め、生物が陸上に適応してからも海に住んでいた頃の記憶を宿して生きています。人間の体液や、お母さんの羊水は、古代の海水の成分と酷似しています。人間は海を体の中に抱えながら生きている、だから塩は人間にとってはないと生きてはいけないものなのです。そして、地球上の全てのものは、長い時間をかけ、やがて最終的に海に還っていきます。塩をつくることでその循環の中にいると思うと、ロマンを感じます」と吉田拓丸さん(写真左)

「土佐の塩丸」の「丸」という字には、その“循環”や“調和”という意味が込められているそうです。

かん水(濃い海水)をつくるところです 攪拌(かくはん)作業

新鮮な海水がどんどん押し寄せる満潮時の表層水をくみ上げ、それを、ハウス内に張ったすだれ状のもの(左写真参照)に通しながら風と太陽の力で適度な濃度になるまで繰り返し、「かん水(濃い海水)」をつくります。

次に「かん水」をろ過し、結晶ハウスの棚に移して、太陽熱で結晶になるまで、夏は最低1ヵ月、冬は2ヵ月以上もかけてかくはん作業を続けます。すると、とろりと濃い水分が徐々に乾燥して固まり、白い結晶が生まれるのです。

海は、地球上のすべてのミネラルが土に染み入り、川を流れて溶け込んだ地球のスープ。このバランスよく溶け込んだミネラルを、時間をかけて一つの結晶の中に閉じ込める。塩辛さに甘味や苦味が混ざった自然本来のうま味を、ぜひご賞味ください。

清藤さんの塩壺

清藤さんの工房

「土器に魅力を感じたことが作陶のきっかけです」と語る清藤さん。

美しいものを作り出そうとして作られたものではなく、あくまで生活(暮らし)に即したかたちで作られていただろう土器。清籐さんが目指すものは、日本古来の土器のように、装飾性よりも“暮らしの道具”としての焼きものをつくること。使う人の生活に溶け込んで、日常の中に自然とそれが存在している。「日常屋」という屋号もそんな想いからだそうです。

塩壺をつくる清藤さん

「ここには土と対話できる豊かな時間があります」

生産性よりも、土の声に丁寧に耳を傾けながら、自然のリズムの中でものをつくっていく。
きっとその過程の中で少しずつ生命が吹き込まれ、使う人はそこに温かさを感じるのだろうと、清藤さんの仕事を見ているとそう思います。

この塩壺は、お塩を入れておくと水分を外に逃がし、サラサラとして固まりにくく気持ちよくご使用いただけます。また、ニンニクやショウガなどの保存にもよく日持ちします。

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吉田 拓丸(よしだ たくまる)
その道25年になる天日塩工房『(有)ソルティーブ』2代目塩守。

清藤 弘晃(きよとう ひろあき)
黒潮町の佐賀地区に工房『日常屋』を構え、暮らしの器にこだわり作陶をつづけている。


土佐の塩丸とクジラの塩壺をギフトにしました

昨年好評だったこのセット。今年は少し違います!
天日塩は、二代目塩守の吉田拓丸さんが、その道20年の両親のこだわりから、さらに自分なりにアレンジを加えた新商品の土佐の塩丸を。塩壺は、清藤さんに砂浜美術館の館長であるクジラをモチーフに、当館オリジナルの塩壺をデザインしてもらいました。
そして今回は、それらを砂浜美術館のギフトBOXに入れ、リボンをかけてのお届けですので、贈り物にもご利用いただけます。

※毎月焼き上げる塩壺に限りがございますので、品切れの際は、翌月までお待ちいただけますと幸いです。
写真の塩壺は通常のサイズとなりますが、ひと回り小ぶりの塩壺とのセットもございます(価格は同じです)。

土佐の塩丸とクジラの塩壺
価格 3,150円(税込)
セット内容 天日塩200g、塩壺1個

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「哲学の浜辺」第2部:美しい砂浜が美術館です

長さ4kmの入野の浜

↑長さ4kmの入野の浜

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<前口上>
このインタビューについて

インタビューは1997年2月8日から10日にかけて、大方町の砂浜美術館事務局、入野の浜、魚市場、黒砂糖工場、居酒屋、うどん屋、佐賀町の天日塩工場を会場に行った。

また、参加者が14人と多いため、砂浜美術館の関係者の発言をまとめて”細字”とした。”太字“はインタビュアーの発言であり、中川理(京都工業繊維大学助教授)と花田佳明(建築家、神戸山手女子短期大学助教授)が務めた。

※このインタビューは、1997年に発行した『砂浜美術館ノート』(非売品)からの転用です。地名や肩書きなどは当時のまま修正せずに使用しています。

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以前、漂流物展の会場で「砂浜は私の命の恩人なんです」と
いってきたお年寄りがいました。
入野の浜に毎日のように通って、砂浜を散歩したおかげで
持病が治ったというんです。

何かを何かに見立てるという発想でいけば、コンセプトにある「美しい砂浜が美術館です」の「美術館」を「学校」や「病院」に置き換えたらどうでしょうか。砂浜が「学校」や「病院」になるわけです。もちろん、学校のすべて、病院のすべての機能を砂浜で代替えできませんから建物は必要です。だけど代替えできる部分はあるでしょう。

以前、漂流物展の会場で「砂浜は私の命の恩人なんです」といってきたお年寄りがいました。入野の浜に毎日のように通って、砂浜を散歩したおかげで持病が治ったというんです。その人にとっては砂浜がまさしく病院だったわけですね。それから、中学の美術の副教材の教科書に砂浜美術館の紹介が載ったこともあります。

美術はもちろんですが、他に理科や社会、体育だってできますね。

じつをいうと、入野の浜は1972年に県の西南大規模公園の指定を受けたのですが、それ以前は中学校も松原の中にあったし、遊山といえば松原、遠足も松原で、入野の浜は町民にとってとても身近な場所だったんです。公園に指定されたことで、中学も、居酒屋までも他に移ることになった。県の公園になることで、逆に遠い存在になってしまったわけです。

すると公園以前の入野の浜は、町民のレクリエーションの場所だったり、美術館以外にもたくさんの機能があったわけですね。

旅館もあったし、アベックもたくさんいました。

恋を語る場所でもあった(笑)。

恋を含めて入野の浜は町民にとって生活の一部だったんです。公園に指定されたことで、そうした生活感みたいなものが排除されてしまったんですね。

なるほど。でも、砂浜がいろいろな場所になる発想はいいのですが、「大方町の砂浜美術館」が「砂浜美術館の大方町」となると本末転倒かもしれません。なんでもかんでも砂浜美術館にまかせてしまえとなると、これはおまかせですからね。本来、自分たちで考えるべき町の振興計画を、民間シンクタンクに丸ごと委ねて考えてもらうというレベルと同じところまで下がってしまう。

いまは修学旅行ですら、旅行代理店におまかせですからね。

11月に入野松原で開催される潮風のキルト展

↑11月に入野松原で開催される潮風のキルト展

じつは結論からいうと、建物をつくらなかっただけで
観念的な場所は「つくった」と思うのです。
もっというとそれこそが建築的な行為だと思いたいのです。

さて、話をコンセプトに戻しますが、「美術館がありません」というのは「美術館がいりません」というのとは違いますね

はい。「つくらない」ともいっていません。

どこかに「これからもつくろうとは思わない」と書いてあるのを読みましたが(笑)。それはともかくとして。じつは結論からいうと、建物をつくらなかっただけで観念的な場所は「つくった」と思うのです。もっというとそれこそが建築的な行為だと思いたいのです。

それはどういうことですか。

鉄筋やコンクリートやガラスといったモノは使わなかったけれど、代わりに空気とか風とか砂とかを使ったわけです。空気や風や砂をモノとすればの話ですが。あっ、砂浜に広がるらっきょう畑や松原も使ってます。つまり、そうしたモノと人間の関係をうまくいじって組み立てているわけです。たとえば、ふだんは何もない砂浜にある日あるとき1000枚のTシャツがひらひらしている。すると、そこに波とか風とか自分との新しい関係が生まれる。この関係こそが建築行為なんです。

でも、建築家は建物を建てて初めてお金をもらえるわけで、砂浜美術館のような、いわば考え方を提示してもお金になりません。

建てる側の論理が危ないのは、じつはそこなんです。地域に文化に根差した上で建てるのはまだ良心的で、多くはなぜ建てるのかという問いかけすらありません。

だけど、ぼくは「オレはとにかく建築するぞー」という人もいてほしい(笑)。というのは、地域の文化と建築はどこかで折り合うと思うのです。

それは折り合います。建築は、本来、地域の自然や文化と折り合いがつけられるはずで、それが建築家の力量の問題なんです。

だけどやっぱり建てるのが仕事なんだから、「なんで建てるのか」という問いかけをもちにくいんじゃないかな。

それは自治体にもいえることです。たとえば発電所を誘致した見返りで立派な公共建築が建ちます。でも、そのお金をハードにではなく、ソフト事業に使うことだってできたはずなんです。じっさい、知人がそうした提案をある町にしたところ、「そんな発想もあったのか」と町長さんに喜ばれたそうです。

(花田)ぼくは、最近、神戸芸術工科大学の「建築のデザイン」という講義で砂浜美術館のことを学生に話しました。話したのは、全12回の講義のさいごのほうです。最初は、床、壁、天井という建築の構成の話から入りました。そして次が空間の意味についてです。同じ床でも色や材料で変わります。それは意味が変わったということなんです。そこに歴史的な背景が加わると、さらに意味が変わる。で、延々そんな建築論を話してから、さいごに「でも、つくらないという発想もあるぞ」と。「高知県の大方町というところには、美術館をつくらないことを選んだ人たちがいる」と。はしごをかけて昇らせて、昇ったところではしごをはずしたんですね。そして、「ではこれから、あらためてつくることとつくらないことを考えてみよう」と問いかけたのです。でも、これは本当は順番としては逆で、建築の設計はまずそこから入ったほうがいいんです。

子どもは遊びの天才、砂浜で何時間も遊ぶことができる

↑子どもは遊びの天才、砂浜で何時間も遊ぶことができる。

ぼくは思うのだけれど、たぶんファミコンで育った人からは、砂浜美術館的な発想は出てこないでしょう。子ども時代にどんなトレーニングをしたのかで決定的にちがうんです。

砂浜美術館のことを聞いた学生たちの反応はどうでしたか。

(花田)とても興味深そうに聞いていましたよ。

(中川)ぼくの講義で砂浜美術館を取り上げたときもそうだった。目をきらきらさせて聞いている(笑)。ただね、都会の学生は村おこしとかに弱いんです。あこがれてしまうんですね。

(花田)学生たちはみなさんのように、小さい頃に野山をかけまわった体験もなければ、ワナをしかけて野鳥を捕って食べた経験もありません。ぼくは思うのだけれど、たぶんファミコンで育った人からは、砂浜美術館的な発想は出てこないでしょう。子ども時代にどんなトレーニングをしたのかで決定的にちがうんです。

(中川)だから砂浜美術館の話に学生が興味を覚えるのも、そうした体験がないことの裏返しなんです。阪神大震災や日本海の重油回収のボランティアが、若い人たちの間でブームになるのもこれに似ていると思います。

なるほどねえ。ぼくも「たまごっち」で体験できる世界と、現実の鳥を飼うこととはちがう世界の体験だと思っています。飼っていた鳥が逃げたときのくやしさまでは、バーチャル世界では再現できないと思うんです。たぶん、いまの子どもたちは現実的な体験や経験の機会をもたされないまま、学校でも家でも毎日シュミレーションばかりやらされているんです。

【『砂浜美術館ノート』(1997年発行・非売品)より】

「哲学の浜辺」第2部をちょっと解説:入野の浜と子どもたち


「哲学の浜辺」第1部をちょっと解説:美術館とはいったいなんだろう


もっと読みたい方へ

砂浜美術館ノートⅡ

砂浜美術館ノートⅡ

立ち上げに携わったスタッフとメンバーも入れ替わり、地域内外とさまざまな人が関わりながら活動を継続してきた砂浜美術館。そんな人びとのインタビューやエピソードを交えながら、1997年から2008年までの10年間の活動記録を掲載しています。

ながい旅でした。

ながい旅でした。

1994年4月18日に発行された漂流物についての冊子です。当時の砂浜美術館学芸員(自称)の想いとセンスがきいた解説は、20年近くが過ぎた今日でも色あせることなく、人の心に響いてきます。

ご興味のある方はコチラへ

第26回Tシャツアート展は全日程を終了しました!

第26回Tシャツアート展

砂浜をタノシム5+αDAYS!

第26回Tシャツアート展

日時 :2014年5月3日(土)-7日(水)[プラスαで2日(金)]8:00-18:00

場所 :砂浜美術館(高知県黒潮町 入野の浜)

審査員 :ナガオカケンメイさん(デザイン活動家)

協力・後援

今年の第26回Tシャツアート展は、初めての来館数2万人を超え、大盛況のうちに終了しました。
本当に数多くの方々にご来館いただき、誠にありがとうございました!
また、Tシャツアート展にさまざまな形でご支援・ご参加いただいたすべてのみなさまに、
この場を借りて、砂浜美術館スタッフ一同、心より感謝申し上げます。

今年の”ひらひら”はデッカイですよ!!!
10年ぶりに集まった、1200点☆(歴代2位です♪)を超えるステキな作品たちが、
ぜ~んぶTシャツになって、一斉にひらひらします。

この壮大な砂浜美術館へ、ぜひお越しください(^^)/
Tシャツの作者と、来てくれた人と、自然。
みんなで大きな風景作品”Tシャツアート展”をつくりあげましょう!

日がのぼったり雲が浮かんだり風が吹いたり、
刻一刻と姿を変える自然の風景、楽しいイベントももりだくさん。
あなただけのとっておきの”作品”が見つかりますように☆

■今年の入賞作品はこちらからどうぞ!

■会期中のアルバムはこちらからどうぞ!



各イベントの詳細

ナガオカケンメイさんとひらひらトーク

5月2日(金)16:30-18:00

砂浜美術館の教室「ひらひらトーク」

会期前日のプレイベント◎ひらひらトークの出演者は、今年の審査員・ナガオカケンメイさん、“砂浜美術館”のコンセプトの生みの親・梅原真さん、“砂浜美術館”をカタチにしてきた立ち上げからの楽芸員・松本敏郎さん、畦地和也さん。Tシャツがひらひらする砂浜で、「ロングライフデザインと砂浜美術館」がテーマのトークイベントです。
今年のひらひらの風景を、ひと足お先に楽しめますよ。

シーサイドはだしマラソン全国大会

5月3日(土)10:30スタート

シーサイドはだしマラソン全国大会

主催:黒潮町教育委員会

全国に数あるマラソン大会…の中で、“はだし”が条件なのは、ここだけ?! 実はTシャツアート展より歴史が長く、今回が第29回目。ず~~っとはだしで走っていますが、ケガ人はゼロ☆の自慢の砂浜コースなのです。Tシャツのひらひらとランナーの共演、どうぞお楽しみください。※エントリーは3月で締め切っております。

Let's“書”on Tシャツ!

5月4日(日)10:00-12:00、13:00-15:00(最終受付は14:30)

Let’s“書”on Tシャツ!

あなたは自分の書いている”字”が好きですか?自分の熱い思いを持っていますか?熱い思いを”字”にして、ひらひらさせてみましょう!!Tシャツに直接書く、ドキドキの体験…。あたなの”字”が一番映えるようにアドバイスしますよ◎(参加料:1枚制作につき4000円) 場所は、Tシャツアート展会場の砂浜の近く「ふるさと総合センター・会議室」です。参加申込みは、名前、Tシャツのサイズ、参加する時間帯、連絡先(携帯、メールアドレス)をこちらへお送りください。

砂浜郵便局

5月3日(土)、4日(日)

砂浜郵便局

2日間限定!正真正銘「砂浜から」お便りできます。
地元の郵便局が出張、砂浜郵便局が開局します。切手の販売(砂浜美術館のオリジナル切手もアリ!)や、投函の受付もできます。

キャンドルナイト

5月5日(月)17:00-20:30

キャンドルナイト

今年は地元大方高校の生徒会のみんなと一緒に企画します!キャンドルもTシャツ型?? Tシャツのひらひらと灯りのゆらゆら。きっとやさしい気持ちになれますよ。4日、5日13時半からキャンドルTシャツのワークショップもアリ。15時ごろからキャンドルを並べるので、お手伝いいただける方も大歓迎!

初夏のぶらぶらしませんか

5月4日(日)11:30-13:00【無料】

初夏のぶらぶらしませんか

土佐くろしお鉄道さんとのコラボ企画。高知駅9:53発の特急『あしずり1号』を、特別に『海の王迎(海のおうむかえ)駅』に臨時停車。あえて手前の駅で降りて、会場までの海岸線を案内スタッフと一緒にぶらぶらウォーキング。途中には天日塩の工房や楽しい磯もありますよ。
参加方法はいたって簡単!『あしずり1号』に乗り、『海の王迎駅』で降りてください。一緒に降りた方が仲間たち(一般のお客さんはおそらくゼロ)。スタッフがドキドキしながら待ちかまえています!(大きな荷物は会場まで預かりますので、ご安心ください)。

ビーサン飛ばし大会

5月5日(月)受付13:00~ 開始14:00~【無料】

ビーサン飛ばし大会

ビーサン協会のルールに基づき、“公式”ビーチサンダルを蹴り飛ばし、その距離を競います。単位はもちろん“ビーサン”(1ビーサン=25センチ)!青空に向かって、思いっきり、蹴り飛ばしましょう♪
大人の部(男・女)と子どもの部がアリ。みなさん本気です。参加申し込みは、当日の会場でどうぞ。

砂像体験

5月3日(土)、4日(日)13:30~
【1台1,000円】

砂像体験

大会での優勝経験もある砂像名人に、砂の芸術『砂像』を教えてもらえるチャンス!水と砂だけで、こんなものが作れるんだ!!きっと、遊びを超越した砂の世界の魅力に出会えるでしょう。
参加申し込みは、事務局0880-43-4915までどうぞ。当日の会場でもOKです。

砂浜のすなびてんぽ

5月3日(土)-7日(水)

砂浜のすなびてんぽ

Tシャツアート展の時だけ浜辺にたつ小さな小屋。本部とお店やさんになります。WEBショップ「すなびてんぽ」のグッズやその他ここでしか買えないものたち。じっくり見ながらお気に入りを見つけてくださいね。今年の新作グッズはこちらから!

海辺のお店やさん

5月3日(土)-7日(水)

海辺のお店やさん

砂浜に向かう小道の両脇にお店屋やさんがぎっしり並んで、縁日のような空間に。黒潮町や周辺幡多地域のおいしいものや手作りのものが大集合しますよ!出店者一覧はこちらからどうぞ。

ひらひら砂浜ステージ

5月4日(日)
11:00-15:00(芝生)、15:30-18:00(砂浜)

ひらひらステージ

松原に囲まれた気持ちのよい芝生ステージと、Tシャツのひらひら前の砂浜ステージで、繰り広げられるダンスや音楽のステージ!出演者とスケジュールはこちらから。

砂浜ウエディング

5月6日(火)16:00~

砂浜ウエディング

砂浜美術館結婚式!略して「砂美婚」…という名の通り、テーマは「サンドアートウエディング」。公募によって選ばれた1組のカップルが、砂浜で結婚式を挙げます。全国から集まったTシャツのひらひらが、お二人を祝福。会場に来られたみなさん、ぜひ一緒に祝福してあげてくださいね!今回のウエディングの模様はこちらからどうぞ。

カツオのぼりとTシャツひらひら@坂折地区

5月2日(金)-7日(水)
フェスティバルは3日(土)の10:00-15:00

カツオのぼりとTシャツひらひら
@坂折地区

カツオのぼりと鯉のぼりが川を泳いでいるのが国道から見えます!Tシャツアート展への行きや帰りに、ぜひ立ち寄ってみてくださいね。3日にはフェスティバルを開催!坂折地区の広場で地元のおいしいものの屋台や地元中学生の演奏などがあります。さらにTシャツもひらひら、鯉のぼりとのコラボを楽しんでくださいね。

ホエールウォッチング

毎日出港!:予約制(8:00、10:00、12:00便)

ホエールウォッチング

砂浜美術館の館長、ニタリクジラに会いにいくホエールウォッチング。美しいその姿に、大感動!大興奮!まちがいなしです。漁師さんの船に乗って、いざ大海原へ!館長の目線(海側から)のTシャツアート展も、ぜひ楽しんでくださいね◎ご予約はコチラ!

田舎モーニング@であいの里蜷川

5月4日(日)、5日(月)8:00-11:00

田舎モーニング@であいの里蜷川

廃校を利用した宿泊施設『であいの里 蜷川』で毎月第1・3の日曜日と月曜日だけオープンするモーニング喫茶。地元のお母さんたちのやさしい手作り朝ごはんが食べられます。甘くてクリーミーなさつまいもコロッケがついてくる「よくんぼモーニング」がおすすめ!コーヒーもおいしいですよ。事前予約は不要。