第28回潮風のキルト展
日時 :2022年11月18日(金)~20日(日)10:00~15:00
場所 :砂浜美術館(高知県黒潮町 入野松原)※雨天:ふるさと総合センター
審査員 :Patch-Work-Lifeさん
【プロフィール】
『あなたがパッチワークすれば、世界はもっと楽しくなる。』をテーマに、インテリアデザイナーとグラフィックデザイナーの目線で創りだすあたらしい「デザイン×パッチワーク」のカタチを発信しています。
【総評】
「潮風のキルト展」の審査を、昨年に引続き務めさせて頂きました、Patch-Work-Lifeと申します(今年で審査させて頂くのが5年目となります)。私達審査員も回を重ねるごとに、「審査を楽しむ」という気持ちへ変わってきたように感じております。もちろん作品を選ぶ、審査するということは悩みに悩みます。審査もそれぞれの視点、それぞれの感覚が違います。選ぶ作品が完全一致することはほとんどありません。だからこそ審査は難しく「楽しい」です。審査を行うとき、作品の目の前に立って「感じる何か」を大切にしています。作品から受ける印象、メッセージを読んでさらに深く感じ、考える事ができます。思いに触れることが出来ます。今年もたくさんの刺激と気付きがありました。これからも「想い」を込めて作品づくりを楽しんでほしいと思います。次はどんな作品をつくりますか?楽しみにしています。
上記の内容をポイントに、今年も精一杯の気持ちを込めて審査させて頂きました。選ばせていただいた各賞作品は、特に私たちの足を止め、心揺さぶられグッと心が引き込まれた作品です。 感動や幸せは意外と身近に、そして日常に溢れている。そしてそれに気づけるかどうかだと思います。
「あなたがパッチワークすれば、世界はもっと楽しくなる。」
Patch-Work-Life
丸井 康司・福井 多倭子・折尾 祐希
入賞作品一覧
【大キルトの部】
潮風大賞 1点(賞金10万円)
タイトル:顔出し NG
作者:山口 千春(大阪府寝屋川市)
【作者メッセージ】
伊藤若沖の絵を題材に、デザインを考えました。私は絵キルトが好きで、主に、日本の古い絵や、風習、おとぎ話を中心に、作品作りを楽しんでいます。
豪華絢爛。独創的な色の鮮やかさに目を奪われました。様々な要素を一枚の作品の中に閉じ込めた『絵キルト』。見事です!様々な角度の切り替えが奥行やリズムを生み出し、作品の中に沢山の視点が創出されている不思議で美しいキルト作品ですね。 壁や天井など柄布を用いて立体的に表現された所も見事です!女性の顔の刺繍や着物布の選定や帯の表現も妖艶で、砂浜美術館の長閑な世界とは異なる異次元な世界観とのギャップも面白く、作品に吸い込まれるように長時間眺めてしまいました。 Patch-Work-Life |
潮風賞 1点(賞金5万円)
タイトル:朝つゆ
作者:幾野 孝子(神奈川県横浜市)
【作者メッセージ】
私がまだ小学生低学年だった頃の思い出の一コマ。夏休みの毎日は、早朝のラジオ体操で始まりました。舗装されていない小道を、ラジオ体操会場まで走るのですが、寝起きの眠い目を覚ましてくれたのは、朝つゆの何とも言えない草の匂いでした。今でもはっきりとその時の風景と共に、まだ早朝の清々しい空気と朝つゆに混じった草の匂いを忘れることが出来ません。そんな思い出を作品に閉じ込めてみました。
朝のすがすがしい空気感が伝わってくるダイナミックな作品です。幼い頃の作者の感じた記憶を辿り、草の匂いや朝つゆの水滴を弾く瞬間がリアルな表現で描かれ、小さな背丈で見えた作者の世界が垣間見えました。オーガンジーやチュールを使用されることで、飛び散っていく水滴の様子が上手く表現され、また、葉の配色やアップリケ葉脈のデザインも立体的で見事に作者の脳裏にある記憶を表現されています。躍動感あふれる作品に仕上がりましたね! Patch-Work-Life |
ささやき賞 1点(賞金2万円)
タイトル:繕い育てるキルト“土佐„
作者:水野 百合子(埼玉県入間市)
【作者メッセージ】
高知に住む娘からのラインで知ったキルト展。子どもたちが幼い頃、よく行った山や川、土佐の自然が鮮やかに思い浮かびました。これ迄は、洗濯機をガラガラ回しても丈夫なキルト作りを心掛けてきましたが、「切りっぱなしの木の葉」「色止めしてないバリの布」を使って、綻びたら繕い、穴があけば上から「落ち葉」を重ねていく手のかかる育てるキルトを作ってみたくなりました。虫たちは未だ会えぬわんぱくなひ孫たちへの贈り物です。
『育てるキルト』という言葉。素敵ですね!落ち葉が土にかえるように、布を育てるということですね◎手がかかる子供ほど可愛いと言いますが、今回製作された手のかかるキルトも可愛いことでしょうね^^上へ上へと葉を重ねていく表現や、布は裁ち切りでその上に丁寧なステッチ。一つ一つ細かなところまで丁寧に繕っていることが随所に感じられ、裏面に映りこまれたキルトラインを見ると、キルトステッチの正確さやその技術の素晴らしさが解りました。さまざまな昆虫を一匹一匹発見する楽しさができる、布を楽しまれたキルト作品です。 Patch-Work-Life |
【小キルト・クッションの部】
こもれび大賞 1点(賞金2万円)
【小キルト】
タイトル:信州御代田 龍神まつり
作者:渡辺 美智代(長野県長野市)
【作者メッセージ】
夫のふるさとの「龍神まつり」は、巨大な龍が山寺の長い石段を下り池を渡り、50人の担ぎ手と共に舞い踊る勇壮な祭です。静謐なお寺の空気の中で躍動する龍に宿る「気」の迫力に圧倒される思いで創作を始めました。古い着物や帯地を使って表現した祥の七宝文様をデザインのベースに、龍の棲む池、龍の迫力、そして祭の楽しさ華やかさをイメージして押絵、水引結び等の技法も加えて仕上げました。
立体的で躍動感あふれた力強いキルトですね!作品全体を眺めているうちにメンバー一同『はっ』としました!七宝文様の表現。いいアイデアですね!全体的に纏まりとバランスの良い作品に仕上がっています。龍を押絵で細部まで描かれており、龍の髭など極細の部分は押絵ならではの表現方法ですね!水引や押絵など、華やかな世界観を作品に表した表現力は見事で、見る側にエネルギーを与える作品です。 Patch-Work-Life |
こもれび賞 2点(賞金1万円)
【小キルト】
タイトル:piece of tears
作者:椋埜 未咲(高知県幡多郡黒潮町)
【作者メッセージ】
悔し涙、嬉し涙、いろんな涙をパズルのように並べて、心の整理をする。時にはぽっかり穴が開いてしまったり、それを他の感情で埋め合わせてみたり。そうしているうちに、いつの間にか、ぱっと晴れやかになっていたりする。雨の中、広い海へ落ちていく雨の雫も、空の涙なのかな。しとしと。ぽつり、ぽつり。遠くの空に虹がかかっていたら、きっと心が晴れた証。
心の整理、心に空いた穴をパズルで表現されているところが作者の感性の豊かさと創造性を感じました。感情をパズルに合わせ、長い制作時間の中で、様々な感情や思いを作品に込めながら制作されている所が、キルトラインの一目一目から感じることができました。作品に込められた作者のメッセージから、色んな想いが垣間見れ、見る人にとって、とても考えるような作品に仕上がっていますね。 Patch-Work-Life |
【クッション】
タイトル:切り株3きょうだい
作者:西村 優美(高知県幡多郡黒潮町)
【作者メッセージ】
松原で切り株に腰かけてひとやすみ。木もれ日そよ風お花見。お1人様からトリオ様までごゆるりとどうぞ。黒潮じぃんずと台湾旅の布と古タオルでできています。
素材の組合せが独特で、何か色んな香りが交り合うような布を楽しまれた切り株のクッションに仕上がりましたね!切株の年輪も様々な色糸でマーブルに描かれ、温かく、また、楽しそうに製作されたことがステッチのラインからも感じることが出来ました。 黒潮じぃんずと台湾旅の布と古タオル。とても素敵な配色と実用的で楽しい切り株クッション。私たちも三人でゆっくりと腰かけさせて頂きました^^優しい座り心地最高でした!! Patch-Work-Life |
砂浜美術館賞 2点(次回キルト展応募券)
審査員:潮風のキルト展実行委員会
【大キルト】
タイトル:がんばるよ
作者:チェリーバスケット(群馬県前橋市)
【作者メッセージ】
パッチワークキルト教室、チェリーバスケット68名のグループキルトです。それぞれの個性あふれる子亀達が、大海原に一生懸命手足をバタバタ動かしながら向って行きます。私達の未来は何があるのかわからないけれど前に前にと「がんばるよー」仲間を見つけて生きていくよーと。大自然の中へ出発するエネルギーいっぱいのかわいい亀さん達です。
この作品は、海の素晴らしさと子亀たちの明るい未来を色とりどりの布で表現されています。親亀になって、また、この砂浜に帰って来る事に思いを馳せている様子が伝わる作品です。 潮風のキルト展実行委員会 |
審査員:砂浜美術館
【小キルト】
タイトル:kira kira chips
作者:岡本 里咲(高知県幡多郡黒潮町)
【作者メッセージ】
年々素敵だなあと思う気持ちが強くなっていたキルト展。今年はなぜかその気持ちが行動に。キルトは全くわからないけど、黒潮町の大好きな景色はしっかり頭の中にあるから、それを表現したい!なんとかできたデザインで、昔祖母が着ていた浴衣の端切れを入れたりしながら、黒潮町の景色がもっともっと好きになる。仕上げは祖母、母と、3世代の力をフル活用。不格好でも、思い描いたものは大抵実現できる!次は“あの景色”を縫ってみようかな。
町の風景の魅力を、見る側にも伝えてくれる一枚。好きな風景を切り取り、優しい色使いで表現するところに、自分の住んでいる町に対する愛情を感じます。砂浜美術館のコンセプトにもある「ここが好きだと言えること」というフレーズがカタチになった、つい目がいってしまう作品です。 砂浜美術館 |